SKYTOPIA "Rain" Music Video -アニメーション表現への挑戦-
目次
2024年8月から2025年8月にかけて、Music ProducerのSKYTOPIA氏と共に、サウンドと映像(Music Video)を並行して制作するプロジェクトを行いました。
複数の作品を継続的に発表する中で、Stash Magazine への掲載や、「Run」のMusic Video が 2025 International Creative Awards にノミネートされるなど、国内外を問わず多くの反響をいただき、自身の映像表現の可能性を広げる貴重な機会になりました。プロジェクトの全体像については、別途メイキング記事を執筆しています。
一方、当時は3分程度の映像表現に慣れることや、グラフィック的な切り口に重点を置いて制作していましたこともあり、映像の展開の中で育まれる物語性については、十分に向き合えていなかったように思います。
そこで、プロジェクトの続編にあたる本作の「Rain」では、3DモデルにIKリギングを導入しながら、キャラクターの関係性やカット同士の構成を意識し、より映像的な文脈や行間を持ったMusic Videoの制作に取り組みました。
ワークフロー
ワークフローについては前作と同様に、サウンドと映像を並行して制作しています。各々の自己マネジメント力や表現力を信頼した上での方針のため、必要以上に干渉することなく、それぞれが柔軟な発想でプロジェクトを進めました。
サウンドと映像を同時に立ち上げていくことで、一方から生まれたアイデアがもう一方へ影響を与える場面も多くあり、一見すると「Rain」というタイトルとは結びつかないモチーフが登場したのも、そうしたやり取りを重ねる中で発想が広がっていった結果でした。
映像の展開
冒頭:クモについて(00:00 - 00:13)
今回のモチーフとして選んだクモは、巣を作り、その場所に留まり続ける生き物です。一方で、その巣は自身を守り、生活を支えるための拠り所でもあります。
そうしたイメージを自分自身の感覚や体験と重ね合わせながら、「自分にとって大切なものを守ろうとする存在」として設計しました。
展開1:ジェリービーンズ(00:14 - 00:49)
クモと同様、冒頭に登場するジェリービーンズは、自分が大切にするものへの期待や可能性の象徴です。展開1では、いくつかのジェリービーンズが発芽する様子と、それを見た銀のクモが期待感を寄せる様子を描きました。
以降、銀のクモは金のジェリービーンズを抱えながら守り続けますが、守ること自体は直接的な変化を生みません。
展開 2(00:50 - 01:44)
映像の中盤では、その対比として、シルエットの似た黒いクモを登場させています。銀のクモから大切なものを奪おうとする存在として描いていますが、単純な悪役として設定したわけではありません。
立場や価値観は異なっていても、その背景には銀のクモと共通する感情や事情があるのかもしれない——。
そうした想像の余地を残すために、あえて銀のクモと似たシルエットを与えました。
Drop(01:45 - 02:00)
Dropにあたるシーンでは、物語の中で銀のクモは、黒いクモによって吹き飛ばされます。その後に走馬灯のような映像を挿入し、Dropの浮遊感を伴ったクモの心理描写へ繋げたいと考えていました。その感覚を映像として表現するため、以前制作していた実写表現のプロトタイプをアップサイクルしています。
このプロトタイプは、自身で撮影した写真を用いて試作していたものですが、当時は自分の過去作品との文脈や関連性を見出せず、作品への採用は見送っていました。今回のシーンでは、記憶の断片や時間の層を感じさせるモンタージュとして機能させています。
一度は手放したアイデアや素材が、別の作品の中で意味を持ち直すことがありますが、このシーンはその象徴的な例だったように思います。
Drop後・ラストシーン(02:00 - 03:00)
Drop後のシーン以降、雨を受けたジェリービーンズが一斉に発芽します。
今回の制作スタイルにおいて、「Rain」というタイトルを映像の中でどのように回収するかは、重要なテーマのひとつでした。
雨を題材にした映像であれば、傘や虹といったモチーフが浮かびますが、それだけではタイトルをなぞるだけの平坦な表現になってしまいます。
そこで今回は、雨を風景として描くのではなく、映像の中の状況を変化させる重要なオブジェクトとして扱いました。
何かを大切に抱え続けていても、物事が動き出すきっかけは意外と自分の外側から訪れることがあります。思いがけない出会いや環境の変化、偶然の出来事によって、それまで停滞していたものが前に進むことも少なくありません。
本作では、そうしたメッセージを2匹のクモ、ジェリービーンズ、そして雨というモチーフを通して表現しました。
IK(インバース・キネマティクス)
クモを主要なモチーフとして選んだ理由には、表現上の意図だけでなく、IKの導入という技術的な側面もありました。IKの基本的な動作を映像制作の中で学んでいくにあたり、足の本数が多い方がより多くの検証や試行ができるためです。
今まで部分的には導入していたものの、グラフィックデザインの領域から映像表現へ取り組んできた自分にとっては、依然として馴染みのない技術でした。しかしながら、IKによって生まれる身体性を伴った表現は、キャラクターを単なる図像(アイコン)ではなく、喜怒哀楽を持つ存在として立ち上げ、物語の気配を生み出す上で重要な役割を果たしています。
今回の「Rain」では、これまで以上に映像としての展開や構成を意識しながら制作を進めました。
一方で、背景や空間演出についてはまだ改善できる余地も感じています。オブジェクトの移動や感情の変化に合わせて環境そのものも変化していくような構成を意識しつつ、今後の制作では内容の密度をさらに高めることを目標にしてゆきたいです。