平面思考で組むVDMX
目次
2025年は例年に比べてVJとして出演する機会に恵まれたため、本記事では、主にVDMXを中心とした使用ツールの設定や、実践の中で意識していたポイントをアーカイブとしてまとめています。 グラフィックデザインをキャリアの起点とし、映像表現や3DCGの領域へと活動を広げてきた立場から、同じようにデザイン畑出身でも、無理なく・楽しくVJに取り組めるということをお伝えできればと思っています。そのため、内容は全体的にビギナー向けの構成です。
そもそもVJとは何かといった基礎的な内容については、本稿では詳しく扱いません。他に分かりやすくまとめられている記事があるため、そちらを参照していただければと思います。
VJを引き受ける理由
ビジュアルやアートワーク制作を起点としたデザインワークを生業としているため、私にとってVJはあくまでサブワーク(副業)的な位置づけです。まとまった収入源として捉えているというよりも、主な理由は大きく分けて次の3点にあります。
楽しい
これだけで十分な理由だと思っています。業界の先輩方からは、忙しい合間を縫ってまで現場に立つ意味があるのか、と問われることもありますが、創作のレールに乗ったままリフレッシュできるという点で、VJはとても健全な行為だと感じています。
また、オルタナティブな立場だからこそ、フレッシュに向き合える体験があるのも事実で、VJという立ち位置はその代表例のひとつではないでしょうか。
プロトタイプの放出
日々制作しているプロトタイプのデータを、実践の場でアウトプットできる機会が多いのも大きな魅力です。ある程度の強度を持った素材を、有耶無耶なまま抱え込むのではなく、人目に触れる場所でしっかりと使うことで、自身の視覚表現と結びついたコミュニティ形成へとつながっていきます。
そのため、素材指定が過度にシビアだったり、映像転換のオペレーション作業の比重が大きい現場については、基本的にお断りするようにしています。
VIを内側から構築する
フライヤーのビジュアルやアートワークを担当したアーティストが出演する現場に帯同し、VJとして出演するケースも多くあります。VIとの整合性が高い映像を流用・再構築することで、写真などのアーカイブとして残った際にも、第三者にイベント全体のトーンを的確に伝えることができ、結果としてブランドの強化やイベント自体の成長につながります。
表層にあるイベントフライヤーやロゴから、内側にあたるVJ表現までを横断的に担うことで、グラフィックデザインと映像双方のスキルを最大限に活かした、よりリッチな仕事が可能になります。
気をつけていること
現場によっては撮影禁止の場合もありますが、等身大の自己を発信する時代において、ライブハウスやクラブハウスとSNSでの自己発信は非常に相性が良いと感じています。そのため、誰がどこでアーカイブしても「強い絵」として成立するよう、明確なシャッターポイントを意識して設計しています。もちろん、演者と空間との関係性を踏まえた上での設計は考慮しています。
また、フリー素材の使用は控え、複雑なモデリングや実写素材についても、自ら制作・撮影することを大切にしています。そうすることで自分が現場に帯同する意味も生まれると考えています。
主な使用ツールと機材
VDMX
プリレンダリングの映像を流すときに使用しているVJツールで、今回の解説はこちらがメインです。 VJ出演自体は上京したての数年前から行っており、その時からVDMXを使用していました。現在も長丁場の現場や、セットの事前打ち合わせがない自由度の高い現場では多様な素材が必要になるため、VDMXを使用しています。
無料版ではプリセットの保存はできないものの、全体像を把握するための試用程度は可能です。 カスタム性が高く、出力したい表現に合わせてセットを組むことができるので、次項にて自分のセットについて解説できればと思います。
TouchDesigner
リアルタイムレンダリングでAudio Reactiveな映像表現を行うときに使用しているビジュアルコーディングツール。
演者に合わせた専用のセットを組むことが多いため、スポットの現場ではこちらを使用しています。
nanoKONTROL Studio
以前は nanoKONTROL Studio を使用していましたが、全体的なスペックを鑑みてのnovation の Launch Control XL を導入しています。フェーダーの抵抗感も程よく、ブラウザベースで設定ができるのが便利です。
VDMXの設定
一番書きたいことが最終項になってしまいましたが、こちらが今回のメインです。VDMX自体は自分のスタイルに合わせてパネルをカスタムしていくツールなので、これが必ずしも正し答えはありませんが、自分がVDMXのセットを組んでいく中でレファレンス探しに苦悩した記憶があるので、誰かの参考になれば幸いです
Step Sequencer
プリレンダリングの際は、用意した素材を状況に応じてミックスしていく前提で、4レイヤー+1レイヤーという構成にしています。
また、会場のBPMやその場の温度感に合わせてRateでスピードを調整し、リズムに呼応する映像転換を行っています。
4レイヤーのうち下2レイヤーを“Bottom”とし、平面的な映像を配置しています。上2レイヤーは“Top”として、透過素材を表示する役割を担っていますが、状況に応じて柔軟に扱うこともあります。
Step Sequencerのグリッドはパターン登録が可能なので、例えば1レイヤーだけを表示したい場合は、Track1のみがアクティブになるパターンを登録し、MIDIコントローラーで制御しています。 左上のRnd(Random)ボタンにパッドをアサインすると、Sequencerがランダムに切り替わるため、一定のリズムからあえて外れた、破壊的な映像転換も可能です。
素材数が十分に揃っていれば、エフェクトに頼らなくても、この設定だけでかなり自由度の高い絵作りができると思います。
+1レイヤーにあたるMedia Bin Logoのレイヤーは、Step Sequencerには紐づけず、アーティストロゴなどプライマリー性の高い素材を配置するための専用レイヤーとして使用しています。
Effect
エフェクト周りについては、まず①のAudio Analysisでトリガーを作成し、②LFOを通してエフェクトの強弱や抑揚を制御しています。
③のエフェクトは、「全体にかけるもの(StroboやGhosting)」と「Bottomのみにかけるもの(KaleidoscopeやGlitch)」の2軸で構成しています。TopのレイヤーではKinetic Typographyなどの素材を扱う可能性が高いため、絵柄を大きく変えてしまうような破壊的なエフェクトはBottomのみに限定しています。
また、VDMXのエフェクトは良くも悪くもやや大味な印象があるため、基本的には2つ以上のエフェクトプリセットを組み合わせ、それらをひとつのエフェクトとして扱う設計にしています。
また、④の箇所でもStep Sequencerを活用し、色味やエフェクトのオンオフも制御御している。
まとめ
こちらで解説したVDMXのセットデータは下記のURLに格納している。
よろしければ、ご自身のスタイルに合わせてカスタマイズしてみてください。もちろん、使いやすければそのまま使っていただいても構いません。
VJは活動の軸というより、表現を拡張するための実験の場のような感覚で取り組んでいます。出演情報は主にXとInstagramでお知らせしていますので、タイミングが合えばぜひ遊びに来ていただけると嬉しいです。